業務用3Dプリンターの選び方とお勧め機種20選

3Dプリンターには、個人用・家庭用の安価な機種と、産業・工業用のハイエンド機種があります。
個人用・家庭用機種の情報は比較的得やすいと思いますが、産業・工業用の3Dプリンターとなると解説が専門的でわかりにくいものが多いのではないかと思います。

メーカー公式情報を見ても一般ユーザにはわかりにくい

メーカー公式情報を見ても「ここが進化した」「従来と比べてここが凄い」というような差分情報が中心で、基準となる情報を知っていないと理解するのが難しいです。

さらに専門用語や表記に関しても、メーカー各社でそれぞれ異なっているので、比較検討することもままならないでしょう。

そこで、このページではそんな選定が難しい産業・工業用の3Dプリンターの中から、自社のニーズに合う3Dプリンターをどのようにして選べば良いのかを3Dプリンター業界の情勢も踏まえて最新の情報をお伝えします。

3Dプリンターを選ぶ基準(軸)について

まずはやりたいこと(用途)、造形方式、造形サイズ、使える素材という4つのポイントを意識して基準となる製品を仮決めしてみましょう。
「比較における基準となる製品」を決めると、3Dプリンターは圧倒的に選びやすくなります。
想定で構いませんので、仮決めした製品を基準にして、相対的に比較検討していくとわかりやすいでしょう。
業界シェアNO.1メーカーであるStratasys(ストラタシス)社の製品を中心に、いくつかピックアップしておきましたので参考にしてください。

海外では既に3Dプリンターを「実生産」で使うことが当たり前に。
そのノウハウが一足飛びに得られるとしたら?

1つの製品に、何個の部品が使われていますか?会社全体では、何種類の部品がありますか?
多い企業では万単位の部品が存在すると思います。

それらの部品の中から3Dプリンターでの生産に向いている部品を自動で見つけ出し、
続々と生産を効率化していけるシステムがあるとしたら、御社の生産はどう変わるでしょう?

3Dプリンターでの部品実生産ノウハウを
御社にインストールするシステム
CASTOR

やりたいこと(用途)から選ぶ

業務用3Dプリンターは、それぞれ使われる目的・用途を想定して開発されています。
それぞれの用途にマッチする機種を厳選してピックアップしましたので合わせてご覧ください。

製造業で試作・治具・工具に使いたい

一言に「試作」といっても、業界や生産品、試作の目的などにより、求められる性能は様々です。
ある程度の強度や耐熱性などが求められる場合や、表面の滑らかさや高精細を求められる場合などもあることでしょう。

造形物の強度・耐久性を求めるなら、世界シェアNo.1のStratasys社のFDM方式の機種がお勧め

予算を抑えながらも工業用品質の3Dプリンター

おすすめ機種:Stratasys F170(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 工業用として使う上で、高精度・高速・高安定性は外せない
  • ABS材料などの機能性材料が使用できる
  • 良いものが欲しいが、予算は500万円未満

この機種は現行のStratasysの3Dプリンターの中でも最も安価なエントリーモデルという位置付けですが、最大のポイントは、上位モデルと比較して精度・速度・安定性等は変わらないということです。
違いは、スーパーエンジニアリングプラスチック等の使える材料の種類に一部制限があるということです。
本来もっと高価格として位置付けても良いほどのスペックの製品がお求めやすい価格で手に入ります。どの程度活用できるかわからない中で最初の1台として選ぶにはお勧めの機種です。

Stratasys F120

豊富な材料を使えて造形サイズも大きい3Dプリンター

おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 多様なシーンで対応可能なStratasysの上位シリーズ製品
  • スーパーエンプラの利用も可能。物性にこだわる試作用途に
Fortus380mc

表面の滑らかさ、高精細を求めるならStratasys社のPolyJet方式の機種がお勧め

導入費用を抑えつつ、広く活用できる機種が欲しいなら

おすすめ機種:Stratasys J35 Pro(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • PolyJet方式の3Dプリンターは細かなパーツの咬合確認等にも最適
  • 低価格材料やクリア材料、ゴムライク樹脂の使用も可能だから、試作の表現力の幅が拡がる
Stratasys J35 Pro

プロダクトデザイン(試作)のリアルなコンセプト確認に使いたい

製品開発の初期段階、コンセプト確認フェーズで、完成度の高い造形物を手に取ることができれば検討はスムーズに進むことでしょう。
機種によっては形状の再現に留まらず、カラー、質感、透明度の再現まで行えるものもあります。

リアルな造形物をつくりたいなら、StratasysのPolyJet方式の機種をお勧めします。

フルカラーかつ、小型な筐体で高精細な造形が可能な注目の最新機種

おすすめ機種:Stratasys J55(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • フルカラー対応
  • クリア樹脂に加えテクスチャーによるリアル表現が可能

形状確認のためのコンセプトデザインの造形から、最終製品イメージを高精度に再現するシーンまで、プロダクトデザインの全工程を大幅に加速・変革します。透明度の高いクリア樹脂と低価格材料にも対応。

Stratasys J55

フルカラーかつ、質感の再現まで求めたい

おすすめ機種:Stratasys J826(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • フルカラー対応
  • ゴムライク樹脂、クリア樹脂に加えテクスチャーによるリアル表現が可能
Stratasys J826

最終製品の製造(DDM)に使いたい

まずは最終製品として使えるレベルの品質を担保できるか

3Dプリンターを最終製品の部品製造に用いることを考えた場合、最初に考えるべきは「最終製品として適した強度・耐久性を持つパーツが製造できるか」ということです。
また前提として「精度が高い」「歪み・変形が少ない」「安定性が高い」機種である必要があります。
3Dプリンターを用いたものづくりのノウハウが必要になってくるので、色々と試行錯誤できるように1台で出来ることの選択肢が多い機種が良いでしょう。例えば多くの種類の材料が使用可能な機種です。

製造個数・利用頻度はどれくらいか

また、どの程度の数量を製造したいか、というのも重要な要件です。
3Dプリンターは、1回の造形に数時間ほど掛かるため、製造する数が多いと生産ラインとして複数台必要になることも考えられます。そうなると安い投資では済まなくなります。

しかし、3Dプリンターでの製造には、工夫して効率化できるところもあります。
例えば、1回の造形につき、3Dプリンター内の面積が許す限り複数個の造形をいっぺんに行うことで効率化することが可能です。

そう考えると、造形トレイのサイズが大きい機種が良いということになります。
造形トレイのサイズは、当サイト上では「造形サイズ」として表記されていますので、参考になさってください。
また、造形スピードにも注目してみてください。

耐久性、耐熱性、耐候性材料を使いたい

おすすめ機種:Stratasys F370(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 装置の価格を抑えたい
  • 幅広い物性の材料を使用したい
  • 熱可塑性エラストマー(柔軟性のある材料)が使用可能

価格を抑えながらも、最終製品で用いられる多様な材料が使用可能な機種です。

Stratasys F370

Stratasysの上位モデル。余裕のある造形サイズで幅広い材料を使用可能

おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 高機能なエンジニアリングプラスチックまで利用可能
  • 高精度
  • 高度な造形データ編集ソフトに対応し「強度」「造形速度」「軽量化」を自在にコントロール可能
  • 広い造形トレイ

厳しい試験にも耐えられるレベルの造形物を出力できる実績ある機種です。

Fortus450mc

金属の部品を製造できる圧倒的に扱いやすい金属3Dプリンター

おすすめ機種:Studio System™2(メーカー:Desktop Metal

選定ポイント

  • ステンレス、高強度ステンレス、銅、インコネル等の金属で造形
  • 焼結工程により強度の高い金属パーツを造形可能
Studio System+™

高精細モデルの造形によるコンセプトデザインやモックアップ試作、最終製品造形の高速化、量産化に適応する3Dプリンター

おすすめ機種:Origin Two(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 射出成型レベルの品質の高品質造形が可能
  • レーザータイプの光造形と比較して100倍の造形スピード
  • これまでにない、高性能材料に対応して最終製品として活用できる。
Stratasys Origin Two

『SAFテクノロジー』を採用した製造向け「粉末床溶融結合方式」3Dプリンター

おすすめ機種:Stratasys H350 (メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 大きな造形ボリュームで最終製品グレードのパーツ造形が可能
  • 再利用可能なパウダーにより1パーツ当たりのコスト削減
  • 積層方向に影響されることなく、全方向に均一な強度を持つモデルの造形を実現
Stratasys H350

特殊な素材を使いたい

3Dプリンターで用いられる材料には、PLAやABSなどの熱可塑性樹脂や、紫外線硬化樹脂、そしてステンレス等の金属があります。
さらに、産業界の要請に応える特殊な機能性材料についても対応が進んでいます。

生体適合性樹脂・耐薬品性樹脂

ガンマ線滅菌やエチレンオキサイド滅菌可能な生体適合性ABSや生体適合性ポリカーボネイト、生体適合性PEI(ポリエーテルイミド)などの材料を用いて造形したい場合、その材料に対応した機種を選ぶ必要があります。

価格を抑えながらも歯科分野で用いられる生体適合性樹脂が使用可能

おすすめ機種:Stratasys J35 Pro (メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 生体適合性樹脂MED610が使用可能で、医療及び歯列矯正歯科用モデルの製作を効率化
Stratasys J35 Pro

Stratasysの上位モデル。余裕のある造形サイズで幅広い材料を使用可能

おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 高精度
  • 高速
  • 広い造形トレイ
  • 生体適合性樹脂・耐薬品性樹脂が使用可能
Fortus450mc

金属

一般の3Dプリンターはプラスチックを対象にしています。
金属材料で造形したい場合は、金属専用の3Dプリンターが必要です。
金属3Dプリンターは近年までパウダーベッド方式という金属粉末を用いる方式が主流でした。この方式のプリンターは高価格で大掛かりな設備となる為扱いにくいものでしたが、今ではそれを払拭するBMD方式の3Dプリンターが登場したことで、金属3Dプリンターは急速に普及しています。
これから金属3Dプリンターの導入をお考えでしたら、今注目の造形方式について検討されることをおすすめします。

金属の部品を製造できる圧倒的に扱いやすい金属3Dプリンター

おすすめ機種:Studio System™2(メーカー:Desktop Metal

選定ポイント

  • ステンレスで造形
  • 有機溶剤を使わずに金属パーツの造形が可能

Desktop Metal社はGoogleやFordからも出資を受けている金属3Dプリンターのユニコーン企業です。

Studio System 2

中量生産を見据えた金属造形できる3Dプリンター

おすすめ機種:Shop System™(メーカー:Desktop Metal

選定ポイント

  • ステンレスで造形
  • 焼結工程により強度の高い金属パーツを造形可能
  • 造形スピードが早く、中量生産まで可能
Studio System+?

カーボン

3Dプリンターで造形する際に、とにかく強度の高い造形物を作りたいとなった場合、金属以外に「カーボン」という選択肢があります。
ナイロンにカーボンの長繊維を混合した素材を用いることができる3Dプリンターでは、他の樹脂に比べ非常に高強度の造形物を出力可能です。

Stratasysの上位モデル。カーボンによる高強度造形が可能。

おすすめ機種:Fortus450mc(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 各種カーボンファイバー材料が使用可能
  • 高速、高精度
  • 試作から最終製品まで
Fortus450mc

ローエンド製品でカーボンファイバーが使用可能

おすすめ機種:METHOD X CARBON FIBER EDITION(メーカー:MakerBot

選定ポイント

  • ナイロンベースのカーボンファイバー材料を含む12種類の材料が使用可能
  • 親会社Stratasys社の技術協力により、熱に対する歪みを軽減するヒートチャンバーを搭載
  • 個人向けと工業向けの中間機種なため比較的安価
METHOD X CARBON FIBER EDITION

巨大な造形物を作りたい

3Dプリンターでできる造形物の一般的なサイズは20~30cm四方程度です。
しかし、大型の造形物を出力したい場合、大サイズ専用の3Dプリンターが存在しますので、それを選びましょう。

大サイズのパーツを高精度に造形するなら

おすすめ機種:Stratasys F770(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 大型造形・低価格・高精度を実現した画期的な製品
  • 大型試作や小さいモデルの複数造形に対応で、試作から最終製品造形まで。
  • 造形サイズは1,000×610×610mm
Stratasys F770

大サイズのパーツを高精度に造形するなら

おすすめ機種:Stratasys F900(メーカー:Stratasys

選定ポイント

  • 高精度なストラタシスFDM方式のフラッグシップモデル
  • 高機能材料での大型試作、治工具、小ロット生産まで対応可能
  • 造形サイズ914×610×914mm
  • 豊富な材料を使用可能
Stratasys F900

価格は抑えつつ、工業用でも使える品質を求めたい

個人向けの安価な3Dプリンターでは不安だが、工業用の3Dプリンターを導入するには予算が足りない場合、個人向けと工業用の中間に位置付けられる機種を導入してみるというのも一つの方法です。

工業用とパーソナルユースの架け橋

おすすめ機種:METHOD X(メーカー:MakerBot

選定ポイント

  • 耐久性のあるABSをはじめ、10種類の材料が使用可能
  • 熱に対する歪みを軽減するヒートチャンバーを搭載
  • 溶解性サポート材に対応し、複雑形状でもサポート除去が簡単
  • 個人向けと工業向けの中間機種なため比較的安価
METHOD X

造形サイズで選ぶ

目的に合った製品を仮決めしたら、その製品を基準とし同等のスペック・機能を持ち造形サイズが異なる製品も検討してみると良いでしょう。

使える材料で選ぶ

3Dプリンターは機種により使える材料が異なります。
業務用3Dプリンターでは、その精度を維持し高い表現性を実現するために、メーカーが開発したメーカー公式材料を用いることが一般的です。(個人向けでは安価なサードパーティー製の汎用材料もあります)
メーカー各社が自社の3Dプリンターに最適な材料を開発しています。

材料の差異は物性だけではありません

業務用の3Dプリンターでは、材料が収められているカートリッジにもかなりの工夫がされています。

例えばローエンドの3Dプリンターでは、リールで巻かれたフィラメントが露出しており、吸湿による劣化があるため保管に気を遣いますが、ハイエンド機種では対策が講じられています。
また、複数の材料を扱える3Dプリンターを、複数のチームが共用する場面では、カートリッジの交換と保管がかなり手間になることがあります。
カートリッジ数が多い機種では、複数の材料をセットしておけるので、交換作業と保管する手間が不要になるなどのメリットがあります。

カタログスペックでは気付きにくいチェックポイント

例えば下記のような事柄はカタログスペックだけ見ていてもわかりにくく、実際に導入された後に気付くものもあります。

チェックポイント

  • 造形の安定性
  • 造形スピード
  • 中空構造
  • 粉塵の暴露等
  • サポート材は取りやすさ
  • 造形物の強度(Y方向の強度とX方向の強度)
  • ソフトウェアは使いやさ
  • メンテナンス・サポート体制
  • マテリアル(材料)の品質や保管方法
  • 造形に歪みの有無

このようにカタログでは分からない点も多いため、造形サンプルを取り寄せることをお勧めしています。
しかし、サンプルは予め用意されていた機種で造形されたり、後加工がされているものが送付されてくるケースもありますので注意が必要です。

造形サンプルを取り寄せて見る際には、下記に注意してください。

期待値とのズレを無くし納得いく選定をするためにも、サンプルを取り寄せる際には、自社で用意した実際に作りたいと思うものに近い3D CADデータをご用意いただき、後加工無しであることを確認されることをお勧めいたします。
当社では期待値とのズレを防ぐため、造形サンプルは後加工無しの状態でお渡ししています。

ご相談ください

3Dプリンターの選定において、基準となるリアルな情報を仕入れることは有用です。
弊社ではWeb上に積極的に情報掲載していますが、お伝えしきれないものもございます。

弊社は各分野の業界トップメーカーの製品を取り揃えており、メーカーの日本公式代理店(一次店)であり、産業機械の専門商社として日本市場においてお客様のニーズに応え続けています。

専門知識を持ったスタッフが、オンライン会議にも対応させていただきますので、お気軽にご相談ください。

選ぶにあたっての基礎知識をまとめています

業務用の3Dプリンターを適切に選ぶには、「造形方式」を知る必要があります。

3Dプリンターの造形方式についてのわかりやすい解説情報

業務用3Dプリンターについてより基礎的な情報はこちらから

業務用3Dプリンター

また、無料のオンラインセミナーも行っています。

最新のオンラインセミナー予定

全機種比較表ダウンロードはこちら