コラム

3Dプリンターでの部品製造はコスト削減になるのか?

2024年10月31日

3Dプリンターを試作ではなく最終製品の部品製造に使うことで、業務の効率化・短納期化・コスト削減などを期待して検討する企業が増えています。
では、実際に3Dプリンターで部品製造するとコスト削減になるのか、検討いたしました。

3Dプリンターによる
部品製造の活用例

製造プロセスにおけるコスト削減の一例として、BMW社の取り組みを紹介します。同社はFDM方式の3Dプリンターを導入し、組み立て用ツールや治具の製造を効率化しました。組み立て治具の製造では、従来のCNCを用いる方法(420ドルのコストと18日のリードタイム)に比べて3Dプリンターでは178ドルのコストと1.5日のリードタイムで約58%のコスト削減と90%以上のリードタイム削減を実現しました。

Rolleri社も3Dプリンターを用いることで、製造プロセスを革新し顧客の要求に応えています。同社もFDM方式の3Dプリンターを使用することで、従来型の成形と鋳造に比べて約65%のコストを削減しました。さらに、従来のメーカーに依頼していた部分の多くを自社内で迅速に製作することが可能となり、製造リードタイムも大幅に短縮できました。

BAE Systems社では3Dプリンターを用いて、従来の金属治具をプラスチック治具に置き換えることで、市場投入までのリードタイムを大幅に短縮し、コスト削減を実現しています。具体的には、金属工具の製造には約100,000ドルかかるところを、3Dプリンターを用いることで約35,000ドルに抑えることができ、65%のコスト削減を達成しました。このように、3Dプリンター技術の導入は、企業のコスト構造を大きく改善する手段となっています。

3Dプリンターによる部品製造で
コストメリットが生まれるパターン

3Dプリンターは、従来の製造プロセスに比べてさまざまなコストメリットをもたらす先進的な技術です。下記のようなケースでは特にコストメリットが期待できます。

1.金型が不要になる

3Dプリンターを使用することで、治具や工具、最終製品を直接3Dプリントすることが可能になります。これにより、製造プロセスから金型を排除でき、金型製作にかかる時間とコストを大幅に削減できます。金型を使用しないため、設計の変更や改良も迅速に反映でき、製品開発のスピードが格段に向上します。

2.金型の保管費用が不要になる

金型の保管は場所を取り、管理が煩雑になるため、近年多くの企業で問題視されています。3Dプリンターを活用すれば、金型そのものが不要となり、保管スペースや管理コストを削減できます。さらに、3Dデータとして保管するため、必要に応じて迅速に再プリントできる点も大きな利点です。

3.組み立てがシンプルになる

3Dプリンターは複数のパーツをアセンブリした状態で造形することが可能です。これにより、パーツ点数を削減できるだけでなく、組み合わせがしやすい形状に造形することもできます。従来の製造方法よりも工程が簡略化し、組み立て作業にかかる時間と手間が大幅に軽減され、人件費の削減に繋がります。

4.輸送コストが下がる
(利用する現地に近い拠点での生産)

3Dプリンターは、その製品を利用する現地に近い拠点で3Dプリントすることが可能です。3Dプリンター自体が、射出成型機やCNCマシンと比べてコンパクトで設置しやすいため、設置場所を選びません。これにより、製品を製造拠点から使用拠点に輸送するコストを削減できます。必要な時に必要な場所で製造できるため、在庫管理の負担も軽減されます。

3Dプリンターによる部品製造の
コスト以外のメリット

3Dプリンターによる部品製造は、コスト削減だけでなくその他のメリットも期待できます。

1.短納期化

3Dプリンターを活用することで、短納期化が実現できます。部品の形状を3D CADで設計し、そのまま造形できるため、従来の射出成型や切削に必要な調整や準備が不要です。これにより、設計から製作までの時間を圧倒的に短縮し、小ロット多品種のパーツを1個からすぐに造形できる柔軟性も兼ね備えています。

2.開発・設計と製作がシームレス化

設計データをデジタル化しておくことで、部品や金型などをデータ在庫として管理することができ、試作から最終製品までを3Dプリンターで完結させることが可能です。従来の製造方法では異なる工程であった設計と製作が一気通貫で行えるため、プロセス間の手戻りや時間のロスが大幅に削減されます。

3.軽量化

例えば、金属材料から強度のあるカーボン入り樹脂に置き換えることで、強度や機能性を保ちつつ、重量を削減することが可能です。また、FDM方式であればモデル内部を空洞化させることができ、強度計算を踏まえた上での合理的なスパース設定(内部空洞化や形状の合理化)により、製品全体の軽量化を進めることができます。

4.設計の自由度の向上

3Dプリンターは、従来の射出成形や切削加工ではできない複雑な形状を実現することが得意です。形状の自由度が高いため、設計者はよりクリエイティブなデザインや高機能な設計を追求でき、製品の性能向上や新規性のあるデザインの実現が可能になります。データがあればすぐに製造に取り掛かれるため、プロトタイピングやデザインの変更にも迅速に対応できます。

まとめ

3Dプリンターを活用することで、部品製造におけるコストを削減することは十分に可能です。BMW社やRolleri社、BAE Systems社の事例では、3Dプリンターの導入により製造コストが58%から65%も削減される成果が報告されています。3Dプリンターは金型不要、製造工程の簡略化、在庫管理の効率化、さらには柔軟な設計変更対応など、多岐にわたるコストメリットを提供します。これにより、製品開発プロセスの短縮と品質向上も同時に実現でき、企業の競争力向上に寄与します。

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この記事の監修者

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アルテック株式会社 デジタルプリンタ営業部 3Dプリンタ営業課 渡邊 誠也
学生時代に3Dプリンターと出会う。以来、3Dプリンターに関わる仕事を求めアルテックに入社。さらに3Dプリンターの沼に入り込み、個人でもMakerbot社の3Dプリンターを所有。その知識量から、部内では3Dプリンターマイスターと呼ばれている。 さらに最近は愛犬家としても社内で知られている。
日々お客様からいただく生の声を糧に、「今、本当に求められている情報」をWebサイトやWebセミナーで精力的に発信している。

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