最終更新日:2021年5月7日
「3Dプリンターがあれば色々できる。製造工程に大きな変革をもたらすことができる。」
それは感覚ではわかっていても、具体的にどう使えるのか知りたい方に、3Dプリンターの用途を整理しました。
3Dプリンターを購入する際は、「今したいこと」に限らず、今後考えられる3Dプリンターの使い道についてイメージしておくと良いでしょう。
実際に3Dプリンターを導入すると「あれも3Dプリンターが使えないか」「この使い方はできないか?」と、発想も適用の範囲も拡がるものだからです。
そのためにも、下記でご紹介する3Dプリンターの特性の把握から行うことをお勧めします。
海外では既に3Dプリンターを「実生産」で使うことが当たり前に。
そのノウハウが一足飛びに得られるとしたら?
1つの製品に、何個の部品が使われていますか?会社全体では、何種類の部品がありますか?
多い企業では万単位の部品が存在すると思います。
それらの部品の中から3Dプリンターでの生産に向いている部品を自動で見つけ出し、
続々と生産を効率化していけるシステムがあるとしたら、御社の生産はどう変わるでしょう?
御社にインストールするシステム
押さえておきたい3Dプリンターの3つの特性
3Dプリンターは産業界に革新をもたらす技術です。しかし、何でもできる魔法の道具ではありません。
用途をズレなくイメージするには、前提として3Dプリンターの特性について知っておくことが助けになるでしょう。
1.3Dプリンターはものづくりの時短に向いている
これまで専門の加工事業者に依頼する必要があった試作が自社内で可能になります。外注費、コミュニケーションコスト、出来上がりを待つ時短は効率化につながります。
Point. 3Dプリンターは1回の造形に数時間掛かる
3Dプリンターに3Dデータを読み込ませてから造形物が完成するまで、短くても(形状にもよりますが)数時間程度要するものが多いです。
そのため、量産には向かないことは留意しておきましょう。
2.3Dプリンターで造形できるサイズは20~30cm四方程度が標準的
3Dプリンターは装置の中で造形物を出力します。
皆様おなじみの紙のプリンターにA4サイズ・A3サイズ対応の機種が存在するように、3Dプリンターも機種によって扱える最大サイズが決まっており、20cm~30cm四方のものが標準的と言えるでしょう。
Point. 大サイズ造形には専用の3Dプリンターがあります
大きなサイズを造形できる3Dプリンターでは、一辺が1mを超えるサイズの造形物を「高精度に」作れるものもあれば、最大高さ1.8mを「高速に」造形できる機種などが存在します。
3.3Dプリンターで使える材料は多種多様
3Dプリンターは、産業界のニーズを満たすために様々な材料を用いることができるよう発展してきました。
PLAのような安価な素材から、ABS樹脂のような熱に強いプラスチック、ゴムのような柔軟性のある素材、透明なクリア素材、耐薬品性、耐熱性のあるスーパーエンプラに、ステンレス、銅、インコネル等の金属、高強度のカーボン入りナイロンまで。
形を再現するだけが3Dプリンターの用途ではないということを感じていただけるかと思います。
Point. 機種によって使える材料に幅があります
ローエンド機種ではこのうち1種類に限定して使用できるものが多いです。
それに対し、ハイエンド機種では多種多様な材料を組み合わせて使えるものもあります。
つまり、ハイエンド機種では1台でカバーできる用途はかなり幅広くなるということです。
3Dプリンターの主な用途
では、3Dプリンターが多く活用されている用途についてご紹介いたします。
製品開発における試作に
これまで3Dプリンターが最も活用されてきた分野と言っても良いでしょう。
製品開発時、実際にモノとして作ることで、外観、使いやすさ、安全性、機能性、耐久性、組み立てしやすさ等、あらゆる面で段階を追って、いくつも試作が成されると思います。
製品企画時におけるデザインイメージの具体的な確認、基本仕様・デザイン検討といった製品開発の上流工程から、材料や部品の組み合わせといった細部のすり合わせまで、3Dプリンターは活用されています。
従来の試作方法の課題
ひとつの製品が形になるまで、何回も試作が繰り返し行われます。
例えば試作金型を外注に出すにも1度の依頼で数十万円からの費用と、数週間~数カ月のリードタイムを要してしまっては、設計者やデザイナーが納得のいくまで試作を繰り返すことは難しくなります。また、製品開発のスケジュールが外注依存になってしまい、外注先が繁忙状態の場合待たされてしまうこともあるでしょう。
3Dプリンターの登場で変わる製造現場
この外注費をカットでき、帰り際にセットすれば翌朝できているというリードタイムの圧倒的な短縮、そしてコミュニケーションコストの削減は製品開発のシーンを一変させるパワーがあります。
FDM方式であれば、形状確認だけでなく、実製品と同じ材料を使用した機能性の確認まで行うことができます。
新製品の投入サイクルの短縮化を求められるシーンにおいて3Dプリンターの導入は非常に有効で、その目的で導入されている企業が多くあります。
また、金属造形物の試作についても同じです。
最新の金属3Dプリンター、特にBMD方式のものはかなり技術が進歩し、金属3Dプリンターの弱点を克服しています。
数年前に金属3Dプリンターを導入検討したが使えないと判断した企業でも再度検討してみていただきたいと思います。
デザインがより価値を持つ世界に
近年デザイン性の高い製品が多くなったと感じていますが、その裏には3Dプリンターの活躍があります。
技術のコモディティ化が進んだ現代、製品の大きな差別化要因としてデザイン面が注目されるようになり、デザインの価値は年々高まっています。
デザイン性の高さからファンを集める多くのメーカーで形状だけでなく、色や質感までリアルに表現できるマルチマテリアル対応の3Dプリンターのニーズが高まっています。
開発スピードを高める
3Dプリンターがあれば試作開発のスピードがアップします。
試作を外注に出す、粘土などの加工できる材料で手作りする、といった手間も時間も掛かる工程から解放されます。
コンセプト確認のレベルを高める
3D CADで描いたイメージをコンセプト確認時点で立体物として手に取ることができれば、議論の精度も高まり、手戻りも減ることでしょう。
近年の3Dプリンターでは、完成品と見紛う程のリアル造形が可能な機種も出ています。
フルカラーかつ、硬質・軟質・ゴム・半透明の材料を複数組み合わせて様々な質感を造形できる3Dプリンターは、デザインにこだわりのある企業の製品企画部門・デザイン部門様で人気です。
外注や工場に依頼せずとも、デザインオフィスだけで完結できるところも魅力と言えます。
デザイン情報漏洩を防ぐ
デザインによる差別化を行う上で、製品デザインが公開前に流出することは避けなければなりません。
デザインに関わる情報漏洩リスクを抑制するために、試作を外注せず社内の3Dプリンターを使って行うケースも増えています。
治具・工具での利用
3Dプリンターでは、生産に必要な治具・工具を造形することも可能です。
BMW社ではエンブレムの取り付け治具を、金属からストラタシスのFDM方式で造形した治具に切り替えました。
これにより、軽量化や人間工学に基づいた「作業しやすい」形状の治具を実現し、モデルチェンジがあってもデータ修正だけで簡単に作り直すことができます。
他にも、特注の置き治具や工具のパーツ、樹脂型など、いざという時に「あったら便利」なものを造形できます。
例えば、メインの用途が試作だとしても、3Dプリンターが空いているときに別の活用もできるのです。
最終製品(部品)での利用
一昔前では、3Dプリンターで最終製品を造形するのは厳しい状況でした。
しかし、技術の進歩と時代の変化から、最終製品での3Dプリンター活用が現実的な選択肢として選ばれてきています。
少量多品種生産に
例えば、航空機は何万、何十万機と量産するものではありません。
しかも、1機で数百万点の部品が使われると言われ、小ロット多品種なパーツが必要となります。
ボーイング社やエアバス社では部品の一部を3Dプリンターで製造することでコスト抑制・効率化と軽量化を実現しています。その点数は数万点に及ぶとのことです。
廃版になった製品の保守パーツ
製品の製造終了後も、保守部品を規定の年数供給することは、メーカーにおける負担になっていることと思います。この保守部品の在庫管理や、部品を製造するための金型の保管・管理のコスト、都度発生する採算の取れない少数製造コスト、それに関わる物流コストもばかになりません。
3Dプリンターの活用で「必要なときに、必要な分だけ」出力することができれば、大きな負担軽減になるでしょう。
また、メーカー側で保守部品の供給も終了している製品については、ユーザ側が形状を三次元測定し、その形に合わせて3Dプリントすることで製品の延命に用いるといったことも、実際に行われています。
3Dプリンターだからできる構造の実現
3Dプリンターは中空構造が容易に実現可能です。
また、CAE技術と相性が良く、強度を保ちながら軽量化することもできるでしょう(トポロジー最適化)。
従来の加工技術では実現不可能な形状も、3Dプリンターであれば実現できるものもあります。
複数種類の素材を同時に用いる3Dプリンターでは、アッセンブリ加工でも実現できない形状・組み合わせで造形することも可能になります。
そのような3Dプリンターだからこそ実現できる形状・特性を利用する製品設計に取り組んでいる企業もあります。
3Dプリンターは「道具」。ただしかなり幅広く使える道具です。
3Dプリンターの導入を検討されるきっかけは、目の前の課題認識から始まることが多いと思います。
「こういうことができる最適な3Dプリンター(道具)はどれでしょう?」と。
しかし、当社がご案内させていただいたお客様の多くは、お話の中で「これができるなら、こんなことにも使えそうだ」と、目の前の課題を超え、たくさんの可能性に気付かれていきます。
そして、納得のいく製品を選ばれています。
当社は、3Dプリンターを買うということは、可能性を買うということだと考えています。
「これができれば良い」というお客様にその通りの製品だけご案内することは容易です。
ですが、せっかく3Dプリンターを導入いただくなら、ご購入後に「こちらにしておけばこんなこともできたのに...」という残念な思いをして欲しくないと考えています。
まだまだ3Dプリンターを導入したことがないお客様も多い世の中で、数多くの「3Dプリンター初導入」を支援し、導入したことがあるお客様には、現場でのさらなる課題解決や、最新の情報をもってお応えしていくことが当社の使命であると考えています。
3Dプリンターの基礎知識や、産業用3Dプリンターの選び方について解説しているページもありますので、ご参照いただければと思います。